更新情報10/12(月)

クラウドネイティブ型電子カルテとは|クラウドリフト型・オンプレミス型との違いと標準仕様の要件【2026年】

クリニックツールナビ編集部公開

要点

クラウドネイティブ型電子カルテは、厚生労働省の電子カルテ普及計画(2026年9月9日)で「クラウド上のサーバーにアプリケーションを構築し、各病院が共同で利用」する形と説明されている電子カルテです。同じ資料は、院内にサーバーを置くオンプレミス型と、クラウド上に医療機関ごとのサーバーを作るクラウドリフト型を、別の形として並べています。国は、標準仕様に準拠したクラウドネイティブ型の製品を認証して普及させる方針ですが、2026年10月時点で認証制度の詳細は厚生労働省のページにまだ掲載されていません。

クラウドネイティブ型電子カルテとは

クラウドネイティブ型は、1つのアプリケーションをクラウド上に置き、複数の医療機関が共同で使う形です。電子カルテ普及計画の参考資料「オンプレミス型のクラウドネイティブ型の比較」は、3つの形を次のように説明しています(資料は病院を例にしています)。

形普及計画の説明
オンプレミス型(閉域網)院内にサーバーを設置し、そのサーバー内で電子カルテのアプリケーションが動作
クラウドリフト型クラウド上に、病院ごとのサーバーを構築し、そのサーバーでアプリケーションが動作。オンプレ型のシステム構成を、クラウドリフトした形式
クラウドネイティブ型クラウド上のサーバーにアプリケーションを構築し、各病院が共同で利用

「クラウド型」と呼ばれる電子カルテには、クラウドリフト型とクラウドネイティブ型の両方があり得ます。サーバーがクラウド上にあるかどうかではなく、医療機関ごとに別のサーバーを作るか、1つの仕組みを共同で使うかが分かれ目です。

3つの形の違い

普及計画は、3つの形の長所(○)と短所(×)を次のように挙げています。

比較3つの形の違い(電子カルテ普及計画の参考資料)

オンプレミス型

院内にサーバー

  • ○希望に応じたカスタマイズ可能
  • ×サーバーの構築・更新が必要
  • ×改修時に現地対応が必要になりやすい
  • ×セキュリティの更新が行いにくい

クラウドリフト型

医療機関ごとのサーバー

  • 拡張時のサーバー構築はオンプレ型と同様
  • 全体がクラウド化していなければ接続点の課題も同様

クラウドネイティブ型

クラウド上で共同利用

  • ×個別のカスタマイズができない
  • ○施設の追加などの拡張が比較的容易
  • ○セキュリティ対策の現場負担を軽減
  • クラウドリフト型は、拡張の際にサーバーの構築などが必要な点がオンプレミス型と同じとされています
  • クラウドネイティブ型は、基本的に現場での対応を不要にできるとされています
  • 普及計画は、日本の医療機関の情報システムは多様な仕様のオンプレミス型が主流で、データ連携が難しく、カスタマイズによるコストも高く、サイバーセキュリティ対策の負担も大きいとしています

標準仕様が定めるクラウドネイティブ型の要件

国が認証を想定している電子カルテのクラウドネイティブ型の条件は、医科診療所向けの標準仕様書(基本要件)第1.0版(令和8年3月31日)の「アーキテクチャ」の遵守項目(必須要件)に書かれています。標準仕様は、医療機関ごとのカスタマイズをなくし、マルチテナント方式のクラウド・ネイティブ化でコストの最適化を図るためとしています。

遵守項目標準仕様の内容
動かす場所電子カルテを構成するアプリケーションは、原則としてパブリッククラウド環境(ガバメントクラウド対象クラウドサービスを利用しているものに限る)で稼働する
提供の形医療機関に提供される、クラウド上で稼働する全てのアプリケーションは SaaS 型
構成マルチテナント方式
ソースコード全てのテナントで共通。テストや更新による一時的なものを除き、複数のバージョンが併存しない
カスタマイズ個々の医療機関のカスタマイズに対応できない仕様
モダン化デジタル庁の「ガバメントクラウドにおけるモダン化の定義」に合う
  • パブリッククラウドの例外: 院内の機器(資格確認端末・プリンターなど)との通信を中継・制御する機能、見読性を担保するためのデータ保管の機能、クラウド障害などの非常時の事業継続のための機能は、パブリッククラウドの外で動いてもよいとされています
  • カスタマイズに当たらないもの: 医療機関の要望で追加した機能でも、その電子カルテを使う全ての医療機関が管理画面などで有効・無効を選んで使えるオプション機能はカスタマイズに当たりません。設定やメタデータの変更で各医療機関の環境に合わせることも差し支えないとされています
  • ガバメントクラウドの公共 SaaS: 電子カルテがガバメントクラウドにおける SaaS(公共 SaaS)を利用している場合は、上の要件に適合しているものとみなされます
  • データの保存場所: 標準仕様は別の項目で、データが日本国内で保持され、海外に送信されないよう設定することも求めています

標準仕様の用語集では、マルチテナントを「共同利用を前提とする環境」、SaaS を「クラウド上に構築されたアプリケーションを、Web ブラウザなどを通じて利用する形態」と説明しています。標準仕様には、アーキテクチャのほかに、機能・セキュリティ・価格の公開などの項目もあります(電子カルテの標準仕様(基本要件)の記事で整理しています)。

国の施策は型ごとにどう分かれるか

普及計画は、診療所の状況ごとに、移っていく先の製品を分けています。

診療所の状況普及計画が示す対応
電子カルテ未導入で、紙カルテから電子カルテに移りたい認証されたクラウドネイティブ型電子カルテ製品(標準仕様準拠)
電子カルテ(オンプレ型)を使っていて、機器の更改が近い認証されたクラウドネイティブ型の製品。クラウド製品では機能が足りない場合はパッケージ版電子カルテ製品(オンプレ型・ノンカスタマイズ)
電子カルテを導入済みで、更新が当面先電子カルテ情報共有サービス・電子処方箋への接続の支援
紙カルテを使い続けたい標準型電子カルテ・導入版(クラウドネイティブ型、紙カルテと併用)

パッケージ版電子カルテ製品は、クラウドネイティブ型の製品が限られ、全ての医療機関の機能には対応できない現状を踏まえた「経過的な対応」と位置づけられています。いまクラウドリフト型の電子カルテを使っている診療所の扱いは、2026年10月時点の普及計画の施策の整理には書かれていません。

令和9年度の概算要求には、クラウドネイティブ型電子カルテの認証・普及を支援する事業(336億円。うち認証製品の導入と、オンプレ型電子カルテから認証製品へのデータ移行にそれぞれ1/2補助(上限あり))と、パッケージ版製品の導入支援(121億円)が入っています。どちらも概算要求の段階で、今後の予算編成や国会審議で変わり得ます。補助の予定は電子カルテの補助金の記事、2030年の目標は電子カルテ義務化2030の記事、導入版は標準型電子カルテ(導入版)の記事で詳しく説明しています。

認証制度はいつから

普及計画の想定では、認証の審査は令和8年度冬頃、認証期間は2027年度早期からです。2026年10月時点で、厚生労働省の標準仕様のページは「認証制度の詳細につきましては、今後掲載いたします」としていて、認証された製品は公表されていません。認証制度の状況と各製品の対応は電子カルテの認証制度と対応状況にまとめています。

診療所が確かめること

公式サイトに「クラウド型」と書かれていても、標準仕様のクラウドネイティブ型の要件に当たるとは限りません。入れ替えや新規導入を考えている診療所は、提供会社に次の点を確かめると比べやすくなります。

  • 医療機関ごとに別のサーバーを作る形か、複数の医療機関が共同で使う形(マルチテナント方式・SaaS 型)か
  • アプリケーションが動くクラウドは、ガバメントクラウド対象クラウドサービスを使ったパブリッククラウドか
  • データが日本国内で保持される設定か
  • いま頼んでいる個別の改修やカスタマイズが、移った先ではオプション機能や設定で代わりになるか
  • 認証制度の詳細が出たあと、認証の申請を予定しているか

オンプレミス型から移る場合のデータ移行について、標準仕様は、移行前後のベンダーにかかわらず使える「共通データ移行レイアウト例」を「参考」として示しています(遵守・推奨の要件は次版以降に設定予定)。安全管理の面で事業者に保守を委託するときの考え方は、安全管理ガイドライン第7.0版の記事で説明しています。

提供形態ごとの製品は、クラウド型電子カルテの比較とオンプレミス型電子カルテの比較で見られます。当サイトの「クラウド型」は、クラウド型として提供されている製品の一覧で、標準仕様のクラウドネイティブ型に当たるかどうかは判定していません。提供会社の一覧はメーカー一覧、開業準備中の方は開業準備のページも参考にしてください。

  1. 1

    MAPs for CLINIC4.5/5

    株式会社EMシステムズ・電子カルテ

    ¥20,000〜/月無料で試せるクラウド電子処方箋整形外科・耳鼻咽喉科・小児科ほか2

    レセコン機能を一体で持つ診療所向けのクラウド電子カルテで、ORCAとの連携も選べる。初期ライセンスは無料の月額制で、Web予約・問診やレセプトチェックの機能を含む。

  2. 2

    Medicom クラウドカルテ4.5/5

    ウィーメックス株式会社・電子カルテ

    ¥24,800〜/月無料で試せるクラウド電子処方箋

    ウィーメックスのクリニック向けクラウド型電子カルテで、レセコン機能を一体で備える。Basicプランは初期費用と月額を公式に示しており、Premiumプランは見積りとなる。

  3. 3

    エムスリーデジカル4.5/5

    エムスリーデジカル株式会社・電子カルテ

    ¥11,800〜/月無料で試せるクラウド電子処方箋

    クラウド型の電子カルテで、レセコン一体型プランとORCA連動型プランから選べる。ブラウザで動作し、電子処方箋に対応している。

  4. 4

    CLIUS(クリアス)4.0/5

    株式会社DONUTS・電子カルテ

    ¥12,000〜/月無料で試せるクラウド電子処方箋小児科・在宅医療

    DONUTSのクリニック向けクラウド型電子カルテで、レセコンにはWEB ORCAを使う。導入作業込みの通常プランと、自分で設定するDirectプランがあり、歯科・鍼灸院・接骨院は対象外。

  5. 5

    CLINICSカルテ3.5/5

    株式会社メドレー・電子カルテ

    料金は問い合わせ無料で試せるクラウド電子処方箋

    自社開発のレセプト機能と一体になった診療所向けのクラウド電子カルテ。Web予約・問診、自動精算機、検査会社などと連携し、iPadでの手書き記録にも対応する。

編集部スコア順(2026年10月12日時点)。当てはまる29本のうち5本を表示。スコアは機能の優劣ではなく、選ぶための公開情報がそろっているかの目安です(採点方法)。

当てはまる29本をすべて見る

よくある質問

いま使っているクラウド型の電子カルテはクラウドネイティブ型ですか

製品の仕組みによります。医療機関ごとのサーバーをクラウド上に作る形なら、普及計画のいうクラウドリフト型です。マルチテナント方式・SaaS 型・カスタマイズ不可などの標準仕様の要件に当たるかは、提供会社に確かめてください。認証の審査は令和8年度冬頃の想定で、2026年10月時点では認証された製品は公表されていないため、認証の有無で見分けることはまだできません。

クラウドネイティブ型の電子カルテでは院内の機器とつなげませんか

標準仕様は、資格確認端末やプリンターなど院内の機器との通信を中継・制御する機能を、パブリッククラウドで動かす原則の例外にしています。どの機器とつなげるかは製品ごとに違うため、提供会社に確かめてください。

オンプレミス型の電子カルテはもう選べないのですか

2026年10月時点の普及計画は、機器の更改が近いオンプレ型の利用者に、認証されたクラウドネイティブ型の製品か、パッケージ版電子カルテ製品(オンプレ型・ノンカスタマイズ)への移行を支援するとしています。パッケージ版は、国が政府の医療DXサービスへの対応・サイバーセキュリティ対策・ノンカスタマイズなどの要件で指定する予定で、2026年9月9日の普及計画には、指定された製品の名前は載っていません。

クラウドネイティブ型ではカルテのデータを海外に置かれることはありますか

標準仕様(基本要件)は、データが日本国内で保持され、海外に送信されることのないよう設定することを求めています。認証の前の製品がこれに当たるかは、提供会社にデータの保存場所を確かめてください。

出典

  1. 厚生労働省「電子カルテ普及計画」(2026年9月9日)
    https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001748251.pdf
  2. 厚生労働省・デジタル庁「医科診療所向け 電子カルテ及びレセプトコンピュータ 標準仕様書(基本要件)第1.0版」(令和8年3月31日)
    https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001683925.pdf
  3. 厚生労働省「電子カルテ及びレセプトコンピュータ標準仕様(基本要件)」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/standardspec.html

制度・料金・製品の情報は変わることがあります。記事は2026年10月12日時点の公開情報にもとづきます。手続きの前に、出典の原文と自治体・提供元の最新の案内をご確認ください。誤りに気づいた方はお問い合わせからお知らせください。

関連するカテゴリ

あわせて読みたい記事

記事一覧

電子カルテの標準仕様(基本要件)とは|医科診療所向けの主な項目と製品の選び方での読み方【2026年】

電子カルテの標準仕様(基本要件)は、厚生労働省とデジタル庁が令和8年3月31日に公表した、無床の医科診療所向け電子カルテが満たすべき要件をまとめた文書です(2026年10月時点の最新は第1.0版)。国の医療DXのサービスとの接続、稼働率99.9%以上、データの国内保持、マルチテナント方式、価格(オプションを含む)の公開などの主な項目と、製品を選ぶときの読み方を整理します。

医療情報システムの安全管理ガイドライン第7.0版|診療所が押さえる改定点と保守委託機関編【2026年】

医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第7.0版は、厚生労働省が令和8年6月29日に策定を通知した最新版で、保守委託機関編が加わって5編の構成になりました。サーバの保守を事業者にすべて委託している診療所は、概説編と保守委託機関編を守ればガイドラインを守っているとみなされます。パスワードの定期変更の削除、二要素認証の期限など、診療所に関わる改定点を整理します。

医療機関のサイバーセキュリティ対策チェックリスト(令和8年度版)|診療所が立入検査までに用意するもの【2026年】

厚生労働省の「医療機関・薬局におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト(令和8年度版)」は、医療法第25条第1項の立入検査で確認され、令和8年度中にすべての項目で「はい」にすることが求められています。機器の台帳・連絡体制図・事業継続計画(BCP)・運用管理規程は現物を見られます。19項目それぞれで診療所が用意するもの、パスワードと二要素認証の期限、安全管理ガイドライン第7.0版のどの編を読むか、事故が起きたときの連絡先を整理します。

診療所のサイバーセキュリティ対策に使える補助金|国の確保事業は病院向け、診療所が使える枠はどこか【2026年】

国の「医療機関におけるサイバーセキュリティ確保事業」(令和9年度概算要求129億円)は補助先が病院で、診療所は入っていません。診療所が2026年10月時点で申請できるのは、デジタル化・AI導入補助金2026のセキュリティ対策推進枠(補助額5万円〜150万円・補助率1/2以内・サービス利用料最大2年分、事務局サイトに載っている直近の締切は10月30日17:00)です。東京都の令和8年度の医療機関向け事業(無床診療所の基準額3,750千円・補助率1/2)は、第2回の申請期限(9月11日)を過ぎて終了しています。

クリニックのツール導入無料相談について