電子カルテ義務化2030は本当か|法律で決まった「普及率約100%」の中身と診療所の準備【2026年】

要点
電子カルテの「2030年義務化」と呼ばれているものは、改正医療介護総合確保法の第12条の3第4項です(2026年10月時点で e-Gov 法令検索に載っている現行の条文)。条文は「政府は、令和12年12月31日までに、電子カルテの普及率…が約100パーセントとなることを達成するよう…医療機関の業務における情報の電子化を実現しなければならない」と定めており、義務を負う主語は政府です。この条文が、個々の診療所に「いつまでに電子カルテを入れなさい」という期限を課しているわけではありません(2026年10月時点)。
法律で決まったこと:第12条の3第4項
法律で決まったのは、政府が2030年12月31日までに電子カルテの普及率を約100%にするという目標です。厚生労働省の電子カルテ普及計画(2026年9月9日)は、この規定を「国会修正により追加された規定」としています。
条文のポイントは次のとおりです。
| 項目 | 条文の内容 |
|---|---|
| 主語 | 政府 |
| 期限 | 令和12年(2030年)12月31日まで |
| 目標 | 電子カルテの普及率が約100% |
| 普及率の定義 | 電子診療録等情報などに係る電磁的記録を利用する体制を整備している医療機関の、全ての医療機関に対する割合 |
| 手段 | クラウド・コンピューティング・サービス関連技術その他の先端的な技術の活用を含めて、医療機関の業務の情報の電子化を実現する |
- 2030年12月31日期限令和12年12月31日
- 約100%電子カルテの普及率政府が達成する目標
同じ第12条の3の第1項は、医療機関の開設者・管理者が電子診療録等情報を電磁的方法で「提供することができる」としています。導入や提供を医療機関に義務づける書き方ではありません。
「義務化」と言われる理由
法律に期限と数字の入った目標が書かれたため、「義務化」と呼ばれることがあります。ただし、条文が義務を課している相手は政府で、医療機関に罰則や届出を求める規定は第12条の3にはありません。
なお、目標の言葉は資料によって少しずつ違います。
| 資料 | 書き方 |
|---|---|
| 医療DXの推進に関する工程表(令和5年6月2日) | 遅くとも2030年には概ねすべての医療機関において必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指す |
| 医療介護総合確保法 第12条の3第4項 | 令和12年12月31日までに電子カルテの普及率が約100%となることを達成する |
| 医療情報化推進方針(令和8年10月1日から適用) | 2030年末までに、必要な患者の医療情報の共有が可能な電子カルテの普及率約100%の達成を目指す |
推進方針では「医療情報の共有が可能な」電子カルテと書かれています。国が数えたいのは、電子カルテ情報共有サービスや電子処方箋などの国の医療DXのサービスにつながる電子カルテだと読めます。
国はどうやって普及させるのか
国は、診療所に導入を義務づけるのではなく、認証制度と導入の補助で普及させる方針です(補助は令和9年度の概算要求の段階で、予算編成や国会審議で変わり得ます)。医療情報化推進方針(令和8年厚生労働省告示第370号)は、政府の医療DXのサービスへの接続などを要件にした標準仕様に沿ったクラウドネイティブ型電子カルテの認証制度を2026年度中に作り、認証された製品の普及を進めるとしています。
- 認証制度を作る2026年度中(推進方針)
- 認証の審査令和8年度冬頃を想定(普及計画)
- 認証期間が始まる2027年度早期から(普及計画)
- 認証製品の導入を補助令和9年度概算要求の段階
普及計画は、医療機関の状況ごとに支援を分けています。
| 診療所の状況 | 普及計画の対応 |
|---|---|
| 紙カルテのまま、国の医療DXのサービスは使いたい | 標準型電子カルテ・導入版(診療所限定) |
| 紙カルテから電子カルテに移りたい | 認証されたクラウドネイティブ型電子カルテ製品の普及支援 |
| 電子カルテを使っていて、機器の更新が近い | 認証製品か、パッケージ版電子カルテ製品の普及支援 |
紙カルテのまま使える国のアプリは 標準型電子カルテ(導入版)の記事 に、認証制度と各製品の対応状況は /ninsho にまとめています。補助の予定は 電子カルテの補助金の記事 で整理しています。
診療所の導入率はいま何%か
医科診療所の導入率は、厚生労働省の医療施設調査(令和5年)で一般診療所の55.0%、支払基金のアンケート(2026年6月)で回答した医科診療所の72.6%です。同じアンケートでは、医科診療所の19.3%が「導入予定なし」と答えています。数字の出どころと違いは 診療所の電子カルテ普及率の記事 で説明しています。
診療所がいま確かめること
2030年までに法律上の罰則があるわけではありませんが、普及計画の補助の案(令和9年度概算要求)は、認証製品・パッケージ版製品・導入版と、政府の医療DXのサービスへの接続を軸にしています。入れ替えや新規導入を考えている診療所は、次の点を確かめておくと判断しやすくなります。
- いまの電子カルテ(または紙カルテ)の契約・保守の期限
- 候補の製品が、電子処方箋・電子カルテ情報共有サービスへの対応を公式に書いているか
- 認証制度の詳細が出たあと、候補の製品が申請する予定か(2026年10月11日時点で、厚生労働省の標準仕様のページは「認証制度の詳細につきましては、今後掲載いたします」のまま)
電子カルテの製品は 電子カルテの比較 で、無床の診療所向けの情報は 無床診療所のページ で見られます。
よくある質問
2030年までに電子カルテを入れないと罰則がありますか
医療介護総合確保法 第12条の3第4項は、政府に普及率約100%の達成を求める規定で、医療機関への罰則は書かれていません。2026年10月時点で、診療所に電子カルテの導入を義務づけて罰則を設ける法令は確認できていません。
紙カルテのままでも国の医療DXのサービスは使えますか
国は、紙カルテを使い続けたい医科の無床診療所向けに、標準型電子カルテ(導入版)を2026年度中の完成を目指して開発しています。紙カルテと併用し、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスにつなぐためのアプリです。
「普及率約100%」は何を分母に数えますか
条文では、全ての医療機関に対する、電子診療録等情報などの電磁的記録を利用する体制を整備している医療機関の割合と定義されています。普及計画の推計では、医科診療所の母数をオンライン資格確認を導入している83,000施設としています。
認証された電子カルテはいつから選べますか
普及計画では、認証の審査は令和8年度冬頃、認証期間は2027年度早期からの想定です。2026年10月11日時点で、厚生労働省の標準仕様のページに認証制度の詳細は掲載されておらず、認証された製品も載っていません。
出典
- e-Gov 法令検索「地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律」
https://laws.e-gov.go.jp/law/401AC0000000064 - 厚生労働省「医療情報化推進方針」(令和8年厚生労働省告示第370号)
https://www.mhlw.go.jp/content/12600000/001756943.pdf - 厚生労働省「電子カルテ普及計画」(2026年9月9日)
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001748251.pdf - 厚生労働省「電子カルテ普及計画の概要について」(2026年9月9日)
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001748243.pdf - 厚生労働省「電子カルテ及びレセプトコンピュータ標準仕様(基本要件)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/standardspec.html
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