電子カルテの標準仕様(基本要件)とは|医科診療所向けの主な項目と製品の選び方での読み方【2026年】

要点
電子カルテの標準仕様(基本要件)は、厚生労働省とデジタル庁が令和8年(2026年)3月31日に公表した、無床の医科診療所向けの電子カルテが満たすべき要件をまとめた文書です。2026年10月時点の最新は第1.0版で、国の医療DXのサービスとの接続、稼働率99.9%以上、データの国内保持、マルチテナント方式、価格(オプション機能を含む)の公開などを「遵守」項目として定めています。国はこの標準仕様に準拠した製品を認証する想定ですが、2026年10月12日時点で認証制度の詳細はまだ公表されていません。
標準仕様(基本要件)とは
標準仕様(基本要件)は、電子カルテを作る事業者(ベンダー)向けに、国が「標準的な電子カルテ」の条件を示した文書です。正式な名前は「医科診療所向け 電子カルテ及びレセプトコンピュータ 標準仕様書(基本要件)」で、第1章が電子カルテ、第2章がレセプトコンピュータ(レセコン。診療報酬を計算してレセプトを作るシステム)です。
| 項目 | 第1.0版の内容 |
|---|---|
| 公表 | 令和8年3月31日(厚生労働省 医政局・保険局、デジタル庁) |
| 対象 | 医科診療所(無床の医科診療所に限る) |
| 構成 | 第1章 電子カルテ/第2章 レセプトコンピュータ |
| 掲載先 | 厚生労働省「電子カルテ及びレセプトコンピュータ標準仕様(基本要件)」のページ |
標準仕様は、医科診療所以外の医療機関が準拠した電子カルテを使うことを妨げないとしています。同じページには、別の文書として中小病院向けの標準仕様書(基本要件)1.0版も載っています。
標準仕様が作られた理由として、文書は無床の医科診療所の電子カルテの課題を3つ挙げています。オンプレミス型(院内にサーバーを置く形)は高コストになりがちなこと、多様な医療DXのサービスへの接続が求められること、検査会社のシステムとの接続の仕様が多種多様で追加のコストがかかっていることです。
「遵守」と「推奨」の違い
標準仕様の各項目は、遵守・推奨・不可・参考の4つの類型に分かれています。製品の説明を読むときは、この類型の違いがいちばん大事です。
遵守
- 準拠するには実装・対応が必須
- 示された内容の全てに適合が必要
推奨
- 実装・対応は任意
- 未対応でも準拠を名乗れる
- 今後「遵守」に変わる場合がある
参考
- 検討中の事項や参考情報
- 今後「推奨」「遵守」に変わる場合がある
「不可」は、その機能や条件に当てはまると準拠を名乗れなくなる類型ですが、第1.0版に該当する項目はありません。また、標準仕様に関係のない機能の実装には制限を設けないとしています。
電子カルテの主な「遵守」項目
第1.0版の第1章(電子カルテ)が「遵守」として定める主な項目は、次のとおりです。
| 分野 | 主な遵守項目(第1.0版) |
|---|---|
| 機能 | オンライン資格確認等システム・電子処方箋管理サービス・電子カルテ情報共有サービスの技術解説書などに規定された機能を持つ。クラウド型レセコンとの接続機能を持つ(電子カルテとレセコンが一体のシステムは除く) |
| 可用性 | 稼働率の実績が原則99.9%以上。新規製品は目標稼働率99.9%以上 |
| セキュリティ | ISMAP、または ISMS認証と ISMSクラウドセキュリティ認証を取得。第三者機関のペネトレーションテスト、主要なソフトウェアの脆弱性診断、定期的なセキュリティパッチの適用 |
| データの保存 | 見読性・真正性・保存性の確保。データを日本国内で保持し、海外に送信しない設定 |
| バックアップ | 物理的かつ論理的に隔離された別のクラウドサーバーか、テープなどの外部メディアに定期的にバックアップする |
| ガイドライン | 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(第6.0版以後)の関係部分などに適合 |
| アーキテクチャ | SaaS型・マルチテナント方式で、個々の医療機関向けのカスタマイズに対応しない仕様 |
| 情報提供・公開 | ベンダーが自ら運営するWebサイトで、価格(オプション機能の価格を含む)を公開済み |
機能の要件について、標準仕様は個々の医療機関に全ての機能の実装を求めるものではないとしています。例として、訪問診療をしない医療機関で訪問診療のためだけの機能を実装する必要はないと書かれています。
稼働率は「年間実稼働時間/年間予定稼働時間×100」で計算します。予定稼働時間から計画停止と大規模災害による停止は除き、事前にサービス仕様書などで決めた責任の範囲で数えます。
電子カルテがガバメントクラウド上の SaaS(公共SaaS)を使う場合は、セキュリティ要件の一部とアーキテクチャの要件に適合しているものとみなされます。マルチテナント方式・SaaS型・カスタマイズ不可の意味と、クラウドリフト型・オンプレミス型との違いは、クラウドネイティブ型電子カルテの記事で説明しています。
電子処方箋・情報共有サービスの経過措置
電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスの機能・接続の要件には、経過措置があります。電子カルテとそれぞれのサービスの間で「クラウド間の連携が実現した旨の公表」があった日から6か月が経つまでは、遵守項目として適用されず、推奨項目として扱われます。
- 公表までの扱い推奨項目として扱う
- クラウド間連携の実現を公表サービスごとに公表
- 公表から6か月この間も推奨項目
- 遵守項目として適用6か月が経過したあと
2026年10月12日時点で、厚生労働省の標準仕様のページに連携が実現した旨の公表は載っていません。このため、「標準仕様に対応」とうたう製品でも、電子処方箋や電子カルテ情報共有サービスへの対応状況は製品ごとに違い得ます。電子処方箋のうち、処方箋の取消のUNDO・変更・院内処方などの一部の機能は、もともと推奨項目です。電子カルテ情報共有サービスそのものの仕組みは、電子カルテ情報共有サービスの記事で説明しています。
推奨項目と、次の版に回された項目
推奨項目には、患者サマリーの登録・閲覧サービス、介護の主治医意見書・請求書の電送サービス、共通算定モジュール(診療報酬の算定と患者負担金の計算をオンラインで行うプログラム)に対応したレセコンとの連携、ウェブアクセシビリティなどがあります。
一方、電子カルテと部門システム(検査など)や業務効率化サービスをつなぐAPIの仕様、電子カルテの間のデータ移行の仕様は、遵守・推奨とも「次版以降において設定予定」です。第1.0版では、データ移行について、オンプレミス型からクラウド・ネイティブ型へ移行する場合に向けて、移行前後のベンダーにかかわらず使える「共通データ移行レイアウト例」を「参考」として示すところまでです。
価格の公開と、求めれば開示される情報
標準仕様は、価格の公開などで、医療機関が導入するときに選びやすくし、導入後のサポートの水準を保つことを目的に挙げています。遵守項目として、価格の公開に加えて、医療機関から求めがあったときに次の情報を開示することを求めています。
- 記入済みの医療情報セキュリティ開示書(SDS Ver5.0)
- 医療機関におけるサイバーセキュリティ対策チェックリスト(事業者確認用)
- サービス仕様適合開示書とサービス仕様書
- 電子カルテ間のデータ移行に必要な事項(データ形式を含む)
- 電子カルテと部門システムの間のインターフェイスの仕様(部門システムのベンダーの求めにも応じる)
- 問い合わせへの一次回答時間の直近3か月の平均値
サポートについては、一次回答時間の平均、応答率、サポートの形(電話・チャット・メールなど)、対応時間帯、一次回答の種別(自動応答のみか、担当者の対応か)を、ベンダーのWebサイトなどで公表することが望ましいとしています。推奨項目には、契約前のデモンストレーションと、契約前のトライアル(実機やアカウントを貸し出して操作を確かめられるようにすること)もあります。
第2章(レセコン)にも、レセコンの価格(オプション機能の価格を含む)をベンダーのWebサイトで公開済みであることなどの遵守項目があります。
標準仕様は改定され、認証は版ごと
標準仕様は、定期的に改定する予定の文書です。第1.0版は、接続先の医療DXのサービスや標準コード・マスタの整備に合わせて、対象を広げたり、類型を変えたりする改定があり得るとしています。
電子カルテ普及計画(2026年9月9日)の資料では、標準仕様は年次更新の予定で、認証は申請した時点の標準仕様で審査する想定です。同じ資料の運用イメージには、ある版の認証の有効期間が過ぎるとその認証は効力を失い、認証準拠の製品であり続けるには新しい版ごとに認証を取る必要がある、と書かれています。また、ある版で必須にする項目は、原則として1つ前の版で推奨として示すとしています。
認証の審査は令和8年度冬頃、認証期間は2027年度早期からの想定ですが、2026年10月12日時点で、厚生労働省の標準仕様のページの「認証制度」の欄は「認証制度の詳細につきましては、今後掲載いたします」のままです(このページの更新情報の最新は2026年5月18日)。認証制度の状況と各製品の対応は /ninsho にまとめています。
製品を選ぶときの読み方
2026年10月時点では認証された製品が無いため、標準仕様は「提供会社に何を確かめるか」の一覧として使うのが現実的です。
- 「標準仕様に対応」「準拠予定」と書かれていたら、遵守項目の全てか、一部かを確かめる
- 電子処方箋・電子カルテ情報共有サービスに、いまどこまで対応しているか(経過措置の間は推奨扱いのため)
- 価格がオプション機能まで含めて公式サイトに載っているか
- データの保存場所が日本国内か、バックアップがどこに取られているか
- SDS・サービス仕様書・データ移行の形式・一次回答時間の平均を、契約前に開示してもらえるか
- 契約前にデモやトライアルができるか
認証の申請は製品を提供する会社の判断です。提供会社の一覧は メーカー一覧 で、無床の診療所向けの情報は 無床診療所のページ で見られます。開業にあわせて選ぶ場合は 開業準備のページ も参考にしてください。下の一覧は、無床診療所向けで、当サイトの掲載DBで公式サイトに料金が載っている電子カルテです(標準仕様の価格公開の要件を満たすかどうかは判定していません)。
ほかの製品も 電子カルテの比較 と クラウド型電子カルテの比較 で見られます。2030年に向けた国の目標は 電子カルテ義務化2030の記事 に、紙カルテのまま使える国のアプリは 標準型電子カルテ(導入版)の記事 に、導入の補助の予定は 電子カルテの補助金の記事 にまとめています。
よくある質問
標準仕様に準拠していない電子カルテは使えなくなりますか
標準仕様(基本要件)第1.0版は、電子カルテを提供する事業者(ベンダー)向けに要件を示した文書で、医療機関がどの電子カルテを使うかを制限する文書ではありません。ただし、普及計画は標準仕様に準拠した製品の認証制度を作るとしており、令和9年度の概算要求(要求段階)には認証されたクラウドネイティブ型製品の導入費用を1/2補助(上限あり)する事業が入っているため、入れ替えの時期が近い診療所は候補の製品の対応予定を確かめておくと判断しやすくなります。
有床診療所や病院は対象になりますか
医科診療所向けの第1.0版は、無床の医科診療所を対象にしています。ほかの医療機関が準拠した電子カルテを使うことは妨げないとしています。病院向けには、中小病院向けの標準仕様書(基本要件)1.0版が別にあります。
歯科診療所向けの標準仕様はありますか
2026年10月時点で厚生労働省の標準仕様のページに載っているのは、医科診療所向けと中小病院向けの2つです。電子カルテ普及計画では、歯科医療機関向けの標準仕様を令和8年度中に策定し、準拠した製品の認証制度を作るとしています。
オンプレミス型の電子カルテは標準仕様に準拠できますか
第1.0版のアーキテクチャの遵守項目は、アプリケーションを原則としてパブリッククラウド(ガバメントクラウド対象のクラウドサービスを使うもの)で動かすこと、SaaS型・マルチテナント方式であることを求めています。院内にサーバーを置いて動かす形は、この要件に当たりません。院内の機器との通信の中継や、非常時の事業継続のための機能などは例外とされています。
出典
- 厚生労働省・デジタル庁「医科診療所向け 電子カルテ及びレセプトコンピュータ 標準仕様書(基本要件)第1.0版」(令和8年3月31日)
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001683925.pdf - 厚生労働省「電子カルテ及びレセプトコンピュータ標準仕様(基本要件)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/standardspec.html - 厚生労働省「電子カルテ普及計画」(2026年9月9日)
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001748251.pdf
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