電子処方箋の運用|導入したのに使われていない診療所の定着の手順と重複投薬チェック【2026年】

要点
電子処方箋の運用は、受付で患者さんが情報の提供への同意と処方箋の発行方法を選び、医師が処方の前に重複投薬等チェックをして、電子処方箋か引換番号付きの紙の処方箋で処方の情報を登録する、という流れで回ります。厚生労働省の資料では、令和8年4月に、運用を始めていた医科診療所21,517施設のうち41.6%が院外処方箋の情報を1度も登録せず、52.5%が重複投薬等チェックを1度もしていませんでした。引換番号付きの紙の処方箋なら、HPKIカードが届く前から登録とチェックを始められます。
導入したのに使われていない電子処方箋
電子処方箋は、運用を始めても日々の処方で使わなければ情報が登録されません。令和8年7月1日の第10回電子処方箋等検討ワーキンググループの資料は、令和8年3月以前に運用を始めた施設の令和8年4月の状況を調べ、医科診療所について次の数字を示しています。
- 41.6%院外処方箋の登録実績なし8,954施設
- 52.5%重複投薬等チェックの実績なし11,296施設
資料は、薬剤情報の登録や重複投薬等チェックが1か月に1度も行われていない施設が一定数あるとして、データの登録と、登録ごとに原則1回以上の重複投薬等チェックを促し、必要性と運用方法を分かりやすく周知していくとしています。普及率の数字の見方は電子処方箋の普及率にまとめています。
診療所での運用の流れ
電子処方箋を使う診療所の業務は、受付・診察・処方箋の発行の3か所で変わります。令和8年度の電子処方箋のオンライン説明会資料は、医療機関での流れを次のように説明しています。
- 受付で患者が同意と発行方法を選ぶ顔認証付きカードリーダー
- 医師が重複投薬等をチェックする電子・紙に関わらず
- 処方箋の情報を登録する電子処方箋か引換番号付きの紙
- 受付: 患者さんはマイナンバーカードで受付をするとき、顔認証付きカードリーダーで過去のお薬の情報の提供に同意するかを選び、あわせて処方箋の発行方法(電子/紙)を選びます
- 診察・処方: 医師は処方する薬を確定するとき、電子処方箋か紙の処方箋かに関わらず、過去の薬と重複していないかなどを電子処方箋管理サービスでチェックします。重複があっても意図して処方する場合は、処方の意図を入力して処方箋と一緒に登録できます
- 発行: 電子処方箋を選んだ場合は医師が電子署名をし、処方内容の控えは患者さんの希望などに応じて印刷して渡せます。紙を選んだ場合は、引換番号付きの紙の処方箋を渡し、これが原本になります
同意がある患者さんについては、ほかの医療機関・薬局で出た分を含め、過去5年分のお薬の情報を見られると説明会資料は説明しています。
電子処方箋・引換番号付きの紙・通常の紙の違い
院外処方では、電子処方箋管理サービスに処方の情報が登録されるのは、電子処方箋か、引換番号付きの紙の処方箋を出したときだけです。電子処方箋に対応している診療所でも、通常の紙の処方箋を出すと情報は登録されません。
| 発行のしかた | 署名 | 患者さんへの提供 | 処方の情報の登録 |
|---|---|---|---|
| 電子処方箋 | 電子署名 | 処方内容の控えの提供は任意 | される |
| 引換番号付きの紙の処方箋 | 記名押印または署名 | 必須 | される |
| 通常の紙の処方箋 | 記名押印または署名 | 必須 | されない |
登録される
- 電子処方箋
- 引換番号付きの紙の処方箋
登録されない
- 通常の紙の処方箋
- 引換番号の印字が無い
引換番号付きの紙の処方箋には、引換番号に加えて「電子処方箋対応」と印字されます。運用を始めたのに登録実績が無い診療所は、まず、処方のたびに通常の紙の処方箋が出ていないかを確かめてください。
HPKIカードが届く前の始め方
HPKIカードが届く前でも、引換番号付きの紙の処方箋を出す運用で、重複投薬等チェックや処方・調剤の情報の閲覧、処方の情報の登録を始められます。説明会資料は、次の2段階で移る方法を示しています。
- 引換番号付きの紙の処方箋で始めるチェック・閲覧・登録を使う
- HPKIカードが届く電子署名の準備が整う
- 患者の希望で電子と紙を選べるようにする電子処方箋の発行を始める
導入の作業手順の説明でも、電子処方箋を前提とした業務に段階的に切り替えるため、まず紙の処方箋だけを出しながら重複投薬等チェックや情報の閲覧に慣れ、その後に患者さんが電子と紙を選べる運用に移る方法があるとしています。HPKIカードの申請先と、署名の方法の違いはHPKIカードとセカンド電子証明書の違いにまとめています。
疑義照会で処方が変わったとき
薬局からの疑義照会で処方の内容が変わっても、医療機関は電子処方箋管理サービスに登録した処方箋のデータを変えません(変えようとしてもできません)。説明会資料は、変更の内容は電子カルテ上に記録するよう案内しています。
薬局で受け付けた後に医療機関側で処方を直そうとすると、別の管理番号の処方箋として再発行され、調剤されない処方箋のデータが残って、次の受診時やほかの施設での閲覧で混乱を招くおそれがあるためです。どうしても登録済みの処方箋を直す必要があるときは、薬局が受付を取り消した後に医療機関が直す手順になり、引換番号も変わるため、新しい引換番号を患者さんに伝える必要があります。
電子処方箋の運用と加算の施設基準
令和8年6月から実施の電子的診療情報連携体制整備加算では、電子処方箋を発行する体制の有無で区分が分かれます。説明会資料では、体制がある場合は医科の加算1・2の対象、体制が無くても施設基準の(1)〜(7)を満たせば加算3の対象とされています。疑義解釈(その4 問1)は、院外処方の場合のこの体制を、原則として電子処方箋か引換番号付きの紙の処方箋を出して処方の情報を登録していることとしています。区分ごとの要件は電子的診療情報連携体制整備加算とはにまとめています。
院内処方の診療所の運用は院内処方の診療所も電子処方箋の対象にに、導入費の補助は電子処方箋の補助金にまとめています。
電子処方箋への対応を公式に記載している電子カルテ
電子処方箋を使うには、電子カルテ・レセコンの対応が要ります。掲載している電子カルテのうち、公式サイトで電子処方箋への対応を記載している製品は次のとおりです。
ほかの製品も含めて比べるときは電子カルテの比較を、無床診療所向けの情報は無床診療所向けのページを見てください。
よくある質問
重複投薬等チェックは紙の処方箋を出すときもするのですか
厚生労働省の説明会資料では、医師は処方する薬を確定するとき、電子処方箋か紙の処方箋かに関わらず、電子処方箋管理サービスで重複投薬等のチェックを行うと説明されています。ワーキンググループ資料も、登録ごとに原則1回以上のチェックを促すとしています。
患者さんが紙を希望したら電子処方箋の情報は登録されませんか
引換番号付きの紙の処方箋を出せば、処方の情報は電子処方箋管理サービスに登録されます。登録されないのは、引換番号の印字が無い通常の紙の処方箋を出した場合です。
受付の顔認証付きカードリーダーで発行方法を選ばない運用はできますか
説明会資料では、診察のときなどに医師が患者さんに直接確かめて電子カルテに発行方法を登録する場合や、院内処方だけを行う場合は、カードリーダーに発行方法を選ぶ画面を出さない設定もできるとされています。
出典
- 厚生労働省「第10回電子処方箋等検討ワーキンググループ 資料1」(令和8年7月1日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/001717124.pdf - 厚生労働省「令和8年度電子処方箋オンライン説明会資料」(令和8年7月14日)
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001723369.pdf - 厚生労働省「電子処方箋」
https://www.mhlw.go.jp/stf/denshishohousen.html - 厚生労働省「疑義解釈資料の送付について(その4)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001694332.pdf
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